品龍寺ブログ

世間ではクリスマスですね。街にはクリスマスソングが流れ、クリスマスムード一色です。

そんななか、昨日とても「ドキっ」としたことがありました。

 

 

 

『病室で念仏を唱えないでください』

 

テレビの音だけ流しながら車を運転していますと、『病室で念仏を唱えないでください』という言葉が聞こえてきました。「ドキッ」としてよくよく聞いてみると20201月から金曜ドラマ枠にて『病室で念仏を唱えないでください』というTBSのドラマが放送されるとのこと。帰ってから調べてみますと「病室で念仏を唱えないでください」(小学館ビッグコミックス)を原作とした本作は、僧侶でありながら救命救急医でもある異色の主人公・松本照円(まつもと・しょうえん)の奮闘を通して、「生きることとは、そして死ぬとは何か」を問う一話完結形式の医療ヒューマンドラマだそうです。

「僧侶でもあり、救急救命医!おもしろそう」ととても興味が湧きました。

また私にとってこのタイトルは過去の記憶を一瞬にしてよみがえらせてくれました

 

 

TBS『病室で念仏を唱えないでください』公式ページより

 

 

 

 

病院で煙たがられる僧侶

 

学生の頃、靭帯断裂と骨折で広島市内の整形外科に入院していたことがありました。

学生が入院するのは珍しかったのか、すぐに色んな人と仲良くなり、可愛がられるようになりました。同じ病室の人もみんな本当にいい人でした。

仲良くなるにつれ若いお坊さんだと知られると、最初は「話を聞いてくれ」、次に「仏教のお話を聞きたい」と言われ、おじいちゃん、おばあちゃんの期待に応えられるよう、お話をしているとだんだんと病室に人が集まるようになっていきました。人が増えてきたので、場所を変え、もっとひろい談話室でお話したりしていました。

 

「お話だけではなく、お経も読んで欲しい」ということになり、患者さんにのせられるまま、毎晩夜ご飯を食べた後に談話室で、読経して、法話をすることになりました。

さすがは「真宗王国、安芸門徒(あきもんと)」と言われる広島のおじいちゃんおばあちゃんです。お経を読むときも一緒に読んでくれる人もいて、中には、経本なしで読む人もおられ、子どもながらにそのありがたさに涙が出そうになったことを今でもはっきり覚えています。

私としては、退屈な入院生活の中で、少しでも助けや、支えになればという一心で引き受けたことですが、だんだんと規模が大きくなっていったため、ついに婦長さんの耳に入ってしまいました。婦長さんに呼び出され、「病院でお経を唱えないでください」と言われました。

病院側としては、「病院でお坊さんなんて、お経なんて、縁起でもない」という理由でした。

当時の私は、「何も仏教は、死者への教えだけじゃない!今を生きる人への生きた教えでもあるんだ!」と思いましたが、口答え出来るはずもなく、ただひたすら謝りました・・・。

 

結局、夜の集まりは禁止、お念仏も読経も病院に響くことは無くなりましたが、

当時、反抗期真っただ中で、「坊主になんてなってたまるか!」と思っていた私にとって、

「お坊さんも悪くないかも」と思うきっかけとなりました。

 

孫と同じくらいの若い自分にでも、救いを求めて話を聞きたい、話を聞いて欲しいと思ってくれる人がいるということ、また、病院には縁儀が悪いと言われたけれど、患者さんの中にはお坊さんを、仏教を求めてくれる人がたくさんいることを気づかせてくれた出来事でした。

 

 

 

カナダでのチャプレン見習い

 

それからというもの、病院とお坊さんという最悪の組み合わせに可能性を感じながらも、

煙たがられるし、病院と仏教(科学と宗教)も相容れないものと思っていましたが、6年前 アメリカやカナダで、まさに目からウロコの出来事がありました。

 

6年前、私は本願寺の代表としてアメリカ・カナダ・ハワイに派遣され海外の浄土真宗寺院の視察に行っていました。あるとき、病院に出入りする浄土真宗の僧侶(*チャプレン)に出会い、その方に付き添って病院で活動する許しが出ました。

 

*チャプレン・・・「病院付き宗教的ケア担当者」のこと

 

その方は病院に法衣姿で堂々と入り、病院内のパソコンを使い、入院患者の誰が仏教徒で、誰が面会を希望されているかを調べ、希望されている患者さんの病室に堂々と入っていきました。病室で手を握りながら仏さまの教えを伝え、病院内で、大きな声で読経もしました。

 

私が学生の頃に日本の病院で、「病室で念仏を唱えないでください」と煙たがられ、怒られたことが、ここでは日常として受け入れられている。患者さんに寄り添う姿、その光景にとても感動したことを覚えています!まさに病院とお坊さんの理想的な姿がそこにはありました。

アメリカやカナダでの「チャプレン」という活動が日本にも広まったらどれだけいいだろうと考えさせられました。

 

 

 

 

僧侶の私が『病室で念仏を唱えないでください』に期待すること

 

お坊さんとお医者さんの組み合わせ、最悪だと思っていましたし、正反対のようですが、よくよく考えるととても近い、背中合わせのような間柄かもしれません。

 

「助けを求める人に寄り添う」という使命も同じですし、お坊さんもお医者さんも、死と隣り合わせの場所にいます。

 

このドラマでは主人公が「医師」として命をどう救うのか、「僧侶」として心をどう救い、死をどう看取るのかがとても気になります。仏教では「生死一如」(しょうじいちにょ)と言い、生きることと死ぬことは表裏一体のものという教えです。死からあまりにも隔絶されたこの現代社会に「生きる」とは、「死ぬ」とは何なのかを、もう一度考えるきっかけを与えてくれるドラマになるよう期待しています。みなさまも是非ご覧くださいね!

私も来年このドラマを見て少しでも見習いたいと思っています。

 

 ちなみに「念仏」とは一般的には、浄土教系の宗派で「南無阿弥陀仏」と称えることを言いますが、坊主頭だったり、身に着けているものから、浄土真宗のお坊さんでは無さそうでした。何宗のお坊さん役なのかも個人的には気になります。

 

それではみなさま「メリークリスマス!」ではなく「ハッピーホリデーズ!」

今日という一日が、幸せになるよう願っています!