最近は、連日お葬式が続くなど、お寺の法務に追われブログの更新が遅れてしまいました。
そんな中、日本は新型コロナウイルスで大変なことになっていますね。
一か月ほど前までは対岸の火事だと思い、「中国は大変そうだな」くらいにしか思っていませんでしたが、
今や日本での感染者は200名を超え、亡くなられた方もおられます。広島や中国地方には感染者が出ていませんが、
感染者が出るのも時間の問題かもしれません。
政府は2月25日になって新型コロナウイルス対策の「基本方針」を発表しましたが、症状の軽い人には自宅療養を求めるくらいで、
イベントの開催については各自の判断に委ねるなど、後手に回っていると世間から強い批判を浴びていました。
一転して、昨日には全国の小中高校、特別支援学校に対して一斉休校を要請し、ここでも賛否が分かれています。
一方で、Jリーグが試合の延期を決めたほか、感染者が出た大手広告代理店の電通は本社の全社員を自宅勤務に切り替えるという対応が広がり、
日本経済への影響が徐々にではじめています。
先ほど、東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドが、政府の方針に従い、
2月29日から3月15日まで東京ディズニーランドと東京ディズニーシー(千葉・浦安市)を臨時休園することを発表しました。
昨日の一斉休校で、急遽休みになった学生が大勢集まることを危惧しての英断だと思います。
東京ディズニーリゾートの対応は、ユニバーサルスタジオなど他の施設の決断にも大きく影響することでしょう。
今後日本はどうなっていくのでしょうか。とても心配です。テレビをつけても常にコロナウイルスのことばかりが流れています。
新型コロナウイルスはもはや他人ごとではありません。
私が予定していた行事も中止が相次ぎ、5月10日に予定されている雅楽の演奏会も開催が危ぶまれております。
また、春のお彼岸やお花見会などのお寺の行事も開催するか躊躇しているところです。私の子どもを含め、
住職の孫たちも来週から学校がお休みで長い春休みになりそうです。東京で両親が共働きの孫も、広島で預かることになりました。
新型コロナウイルスもまだ治療法が確立されていなくて未知のウイルスということもあり本当に恐ろしいのですが、
もっと恐ろしいのは私たち人間かもしれません。
巷ではマスクや消毒液がほとんど売ってない状況です。
昨日インターネットでマスクを買おうと見ていたら、5万円という高値で売っているお店もありました。
マスクが本当に必要な人に届かず、転売目的で買い占め弱みに付け込んで人がお金を儲けようとする人もいます。
こういう非常時には、私たちの心のあり方がさらなる混乱を生み出します。
かつてオイルショックの時のトイレットペーパー騒動も、本当は不足などしていないのに、たった一軒の店の品切れがきっかけだったそうです。
偶然の品切れが噂になり、テレビで報道され、誤った情報が広がり、品切れ騒動にまで発展しました。
映像を見ると、他の人を押しのけ、我先にとトイレットペーパーを買いあさるまるで餓鬼道のような光景でした。
オイルショックのことを学んだ時には、今の日本ではもうこんなことは起きないだろうと思っていましたが、
やはり人間の本質は変わらないのでしょうか。
私たちの弱い心と過剰な報道、そして自己中心的な購買行動が、パニックによる品切れ状態を作り出しています。
メディアやSNSの影響も大きいと思います。パニックの情報が入れば、その騒ぎを繰り返し報道することもあります。
街頭インタビューでは、焦っている人たちが登場したりもします。そしてまたパニックを生み出すという連鎖です。
浄土真宗を開かれた親鸞聖人は、
悪性さらにやめがたし こころは蛇蝎(じゃかつ=へび、さそり)のごとくなり
(正像末和讃)
「この身に備わった悪い性(さが)は消そうと思っても消えるものではない、わたしの心はまるで毒を持ったヘビやサソリのようです」
と、言われました。
同じ水でも牛が飲んだら牛乳が作られますが蛇やさそりが飲んだら毒を作り出すのです。
私たち人間も、蛇やさそりと同じように煩悩(ぼんのう=欲望)という毒を作り出しています。
煩悩の中でも三毒の煩悩といって貪欲(とんよく・むさぼり)・瞋恚(しんに・いかり)・愚痴(ぐち・おろかさ)です。
この毒をこの身いっぱいにかかえて縁にふれて、いつおそろしい毒が出てきてもおかしくないのです。
過剰に怖がることなく手洗い・うがい・人込みには極力出かけない等の基本の感染対策をしっかりやること、
睡眠、食事、そしてなにより冷静に心の健康を保つことこそ大切だと思います。
コロナウイルスより怖いものは過剰な不安から生まれます。
感染者はまるで犯罪者のように扱われ、偏見やいじめが起こります。
人として、こういう時こそ助け合いたいものですが、私利私欲を優先させた足の引っ張り合いも起こってしまいます。
人の体に感染するコロナウイルスも怖いですが、人の心に生み出される煩悩というウィルスこそいちばん怖いものかもしれません。
今も医療現場などの最前線ではマスクや防護服、消毒液が足りない中、働きづめに働いてくださっています。
同じように、何をしでかすか分からない私たち人間を
阿弥陀さまは、「だからこそ救わずにおれない、捨てておけない」と弱い私を目当てとして今ここで働き詰めに働いてくださっています。
弱い自分を見つめなおし、コロナウイルスに対しても過剰に不安がることなく、冷静に対処して動揺しないよう日々過ごしたいと思います。