今や社会現象となっているアニメ「鬼滅の刃」。
原作漫画の発行部数は累計1億部を超え、10月16日に公開された「鬼滅の刃」の映画は、
公開10日間で100億円を超える興行収入となっています。
去年から人気が出ていましたが、今やどこにでも関連グッズが並び、
公園では子どもたちがおもちゃの剣で「鬼滅の刃」ごっこに興じています。
一年ほど前は若い女性がブームの中心でしたが、小さい子から、家族層、おじいちゃんおばあちゃんまで、
いまや老若男女問わずの人気ぶりです。
私は普段、アニメはほとんど観ませんが、コロナ禍で休校中、暇を持て余した子どもたちとアニメを見始めると、
内容もさることながら、今時のアニメはこんなに映像が綺麗なのかとびっくりしました。
「鬼滅の刃」とは、簡単に言うと大正時代の鬼退治のお話です。
“鬼”に家族を殺された主人公がタイトル通り“刀”で鬼を斬るという話。
わかりやすい話ですが単純に勧善懲悪というわけではありません。
悪い鬼たちも、元々は人間で、悲しい過去を背負っています。
主人公は家族思いで心優しく、倒した鬼にも敬意を払い、鬼もその主人公の姿に涙を流すこともあります。
令和時代の日本人が、忘れかけた古き良き時代背景と人情、単なる人と鬼の戦いではなく、
それぞれに暗い過去があり、情けを感じることも人気の要因となっていると思います。
そんな大人気の鬼滅の刃の映画、コロナの影響で随分と公開が遅くなりましたがようやく公開。
子どもたちは待ってましたと言わんばかりに「いついくー?」と催促してきます。
コロナに対する警戒感もあり、映画館を調べると、前後左右は完全に空席で、換気もされていて、
マスク着用で喋ることもないし、これだけ対策されているなら大丈夫かと結局、先日見にいってまいりました。
映画館は、市松模様に座る方式で、思ったより人も少なく、ひじ掛け争いや前の人の頭で見づらいなどのストレスもなく
本当にゆっくりと見ることが出来ました。
とりあえず子供が見たがるので、見ていましたが、だんだんと引き込まれ、知らず知らず心打たれていました。
捨て身の愛・友情・人を信じること、今の日本に必要なことを教えられた気がします。
これならもっと子どもにも見てもらいたいと思いました。
特に印象深かったのは、主人公の先輩、炎をまとう剣士「煉獄杏寿郎(れんごくきょうじゅろう)」の言葉です。
この煉獄さん、豪快で明朗快活な性格で、どこまでもまっすぐ。
炎のように熱く燃える男で、人間を愛し、民を守るために鬼を狩る尊敬できる人柄です。
この煉獄さんが、敵である鬼との戦いの中、重傷を負います。
その際、
「お前も人間なんてやめて鬼にならないか」
「鬼になれば仮我もすぐに治り寿命も長い」と鬼になることを勧められますが、
その時に言った一言
「老いることも死ぬことも。人間という儚い生き物の美しさだ。
老いるからこそ死ぬからこそ、たまらなく愛おしく尊いのだ」
死を覚悟し、一切の動揺も迷いも見せず、人間の美しさと己の信念を語る姿に心打たれました。
煉獄さんは鬼と戦った末に命を落としましたが、彼の精神は主人公や仲間の心に宿ります。
人間は心に宿した炎を死後もなお、誰かに灯すことができることを改めて教えられました。
私たちは生きることに執着し、「老い」や「死」を忌み嫌い遠ざけて考えようともしませんが、
この映画を通して、自分はどう生き、どう死んでいくのかを考えさせられました。
何より、この年になり、あまり見ないアニメにも関わらず、この煉獄さんから教わることが多かったです。
正々堂々と真っ直ぐに生きる姿がかっこよくて美しく、その姿が子どもたちにも伝わっているようで、娘は大号泣していました。
「鬼滅の刃」に、そして煉獄さんに心震わせ、自分もこうありたいと思える人が多いことこそ、
まだまだこれからの日本の未来は捨てたもんじゃないと思えました。
大正時代に生きる人が持っていた、日本人の逞しさ、誇り、精神力がこうして
、世界に誇れる漫画やアニメを通じて令和時代の子どもたちに受け継がれていくのも素敵です。
この世は不条理なことだらけで、悩みも尽きることがありません。
誰もが鬼のように心に傷を負い、人の心の中にこそ鬼がいる。
その鬼とどう向き合っていくか、生きること、死ぬことをストレートに表現され、
コロナによって日本中の人が生死についてより深く考えた今だからこそ、
さらに心を動かされたのではないかと思います。
多くのかたが、鬼滅の刃に共感し、10日で100億円を突破するほどの感動をもたらし、
そして、コロナ禍を乗り越えて希望へとつなげてくれた作品だと思いました。
みなさまも、アニメだから、漫画だからと敬遠せずに是非一度目を通してみてはいかがでしょうか。
きっと大切なことを教えられることと思います。