品龍寺ブログ
初めての島でのお葬式(2020年6月25日)

 

江田島でのお通夜・お葬式

 

先日、お寺の門徒さんより島での通夜葬儀に来て欲しいとご依頼がありました。

 

93歳のおばあちゃんで、長年、島の人たちに日本舞踊や三味線を教えられていた華やかな方です。

 

島のみんなに大変慕われていたそうです。

 

まずは、ご遺族、ご縁のみなさまにお悔やみ申し上げます。

 

葬儀の場所は江田島、瀬戸内海に浮かぶ小さな島で、人口は25000人くらいだそうです。

 

江田島と言えば、牡蠣とみかん、牡蠣は生産量日本一です。最近はオリーブも有名だそうです。

 

もちろんご依頼があれば、日本全国どこにでも伺いますが、基本的に広島市内が多いため、島での葬儀は初めてでした。

 

この江田島には橋が架かっており車で行くことも可能ですが、今回は大分遠回りになる場所なので、宇品港からフェリーで行くことになりました。

 

江田島に行くのも20年ぶり、車でフェリーに乗ったこともありません。

 

今まで、車はもちろん、飛行機、新幹線、電車、自転車、あらゆる乗りものでお葬式に伺ったことはありますが、フェリーは初めてです。

 

聞いた時は、

 

え?江田島に車ごとフェリー!?

 

どうやって行くの?

 

予約しないといけないの?

 

何分前に着けばいいの?

 

と分からないことだらけです。

 

事前に行き方をしっかり調べ早めに出ることにしました。

 

 

 

 

予定通り乗船時間の30分前に到着し、しばらく車に乗ったまま待機場所で待つことに。

 

乗船券はどうやら船に乗る前にお兄さんから買うらしいことがわかりました。

 

しばらくすると船がきました! 係のお兄さんの誘導に従って恐る恐る前へ進みます。

 

船の前でお兄さんにお金を払い乗船券を受け取ります。

 

船に乗り込み誘導されたところに駐車し、そのあとはどうするの??

 

周りをキョロキョロと見渡すと、車から降りる人、そのまま車に乗っている人さまざまです。

 

ひとまずエンジンを切り、車から降りて客室に座ることにしました。

 

戸惑うことばかりでしたが、船の窓から見る景色は本当に綺麗でした。

 

夕日に照らされ、キラキラと輝く海や島々の織り成す景色に、ただただ感動していました。

 

しばらくすると海の真ん中に大きなクルーズ船が停泊していました。

 

停泊しているクルーズ船と言えば、連日ニュースで騒がれた「ダイヤモンド・プリンセス」号ですが、

 

「なぜこんなところに大きな船が?」と思いました。

 

船には「ピースボート」と書かれています。調べると、

 

停泊しているのは、世界一周の船旅の「ピースボート」のクルーズ船です。

 

中国で修繕の予定も新型コロナウイルスの影響でドック入りできず、待機するため2月20日に広島港に入港したということです。

 

まさかこんな近くにも新型コロナウイルスの影響で停泊中の船がいるなんて、まさに他人事ではないと思いました。

 

広島市によると、クルーズ船「オーシャンドリーム」号は

 

オセアニアクルーズの後,2月15日横浜港着岸時に乗客・乗員全員は検疫済み。

検疫上問題なく,乗客は横浜港,神戸港にて全員下船し,乗員のみ乗船している。

 

ということです。

 

少しずつコロナ前の日常を取り戻しつつある私たちですが、人知れず、

 

こんな海のど真ん中にもまだまだ苦労されている方がいるのだと改めて気を引き締めることが出来ました。

 

船は進み前方に大きな島が見えてきました。

 

船の航路のすぐ近くまで、牡蠣イカダが所狭しと並んでいます。

 

港に着き、係の方の誘導で船から降りて会場に向かいます。

 

迷いはしましたが、予定よりだいぶ早く、無事会場に着くことが出来ました。

 

喪主さまにご挨拶をして葬儀社の方と打合せがあります。

 

打ち合わせ中いろいろなお話を聞かせてもらいました。

 

近くの海を潜水艦や自衛隊の船が通る事、江田島には信仰心のある方が多いこと、

 

お朝事の風習があり、参列された方も、お経を一緒にお勤めされることが多いことなど。

 

「参列されるみなさんはいつもは大きな声で正信偈のお勤めをされるけど、

 

 このご時世なので、一緒にお勤めすることは遠慮してもらっています」

 

ということでした。

 

 

 

 

 

江田島のお朝事(おあさじ)

 

江田島ではお朝事(常朝時)といってお寺の本堂で朝早くからお勤めと法話があります。

 

京都の本願寺や築地本願寺、全国の別院では当たり前のように行われているこのお朝事ですが、

 

一般のお寺でされているところはほとんどありません。

 

お寺の住職が一人でお勤めしていることはあっても、近所の方もお参りしてくるお寺は本当に少ないと思います。

 

このお朝事、島にあるほとんどのお寺で、200年以上の昔からずっと続いているとのことです。

 

本当に頭が下がります。なかなか出来るものではありません。

 

私なら間違いなく年に数回は寝坊してしまいます。

 

お寺もすごいですが、お参りされる近所の方も本当に尊くありがたいですね。

 

最近はお朝事にお参りされる方が少なくなってきているようですが、このありがたい風習が末永く続けばと思います。

 

 

 

 

お通夜は滞りなくお勤めすることは出来ましたが、ひとつ分からないことがありました。

 

それは、私の目の前の机に冷水が置いてあったことです。

 

私のために置いてくださっているのか、仏さまへのお供えなのか分かりません。

 

けれども、なんとなくお供え物のような入れ物に入っているのです。

 

ちょうど喉が渇いていたので、喉を潤したいと思いましたが、お供えだったらとんでもなく失礼なことです。

 

迷いましたが、結局飲むことはやめておきました。

 

(※翌日、葬儀の時に「昨日と同じように水を用意していますので喉が渇いたら飲んでください」

 と言われ、優しい心配りに感謝しながら美味しくいただきました)

 

 

江田島から帰る際、次のフェリーまで時間があったので港に車をとめ、少し散策しました。

 

何人かの島の人たちとすれ違うたびに、僧侶姿の私に気づき、陽気に挨拶してくれることがとてもありがたかったです。

 

市内では衣姿の私を見ては少し怪訝な顔をされるかたもおられる中、本当にこの島はお念仏の教えが染み込んでいるのだなあと感動しました。

 

 

船が来て、係の人の誘導をぼーっとしながら待っていると、船から「ボーッ!!!」というけたたましく汽笛を鳴らされました。

 

ビックリしながら向こうの船を見ると、船の中で係の人が大きな手招きで「来い来い」とジェスチャーしてました・・・。

 

最後まで、勝手のわからないまま、なんとか帰路に付くことができました。

 

人ごみや、渋滞に疲れた自分にとって、島ののんびりした風景はとてつもなく魅力的で、全てのものがゆったりと輝いて見えました。

 

初めてで、分からないことだらけの島でのお葬式ではありましたが、

 

お寺にお参りすることが日常になっていることのありがたさ、受け継がれてきた歴史をひしひしと感じることが出来ました。

 

元々は市内に住まれていたという故人様が戦争で江田島に疎開し、戦争が終わってもそのまま住まれたという気持ちが少しは分かった気がします。

 

初めて訪れる場所は少し不安ではありますが、いろいろなことを勉強させてもらい、感じることができ、本当にとってもありがたいご縁になりました。